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認知症予防の最前線 ― 生活習慣で脳を守る時代へ

もの忘れは「年齢のせい」だけではない

最近「人の名前が出てこない」「鍵を置いた場所を忘れる」――
そんな小さな“もの忘れ”を感じると、誰もが「もしかして認知症…?」と不安になります。

しかし近年の研究で、認知症の約45%は生活習慣の改善で予防できることがわかっています。
つまり「脳の老化」は避けられない運命ではなく、自分の選択で遅らせられる時代に入っているのです。

最新研究が示す「認知症は予防できる病気」

2023年に発表されたアメリカの大規模研究「US POINTER」では、
60〜79歳の2,000人を対象に、食事・運動・社会活動などの生活習慣を2年間改善した結果、
認知機能が平均20%以上向上したことが明らかになりました。

特に注目すべきは、
「軽い取り組みでも効果があった」こと。
この研究では、週数回の運動・栄養指導・認知トレーニングなどを行った参加者のほぼ全員で、
記憶力や思考力のスコアが改善していました。

つまり、特別な薬や装置を使わずとも、生活習慣を整えることで脳は若返るのです。

目次

認知症を招く5つの生活リスク

最新の医学的分析では、認知症の主な危険因子として以下の5つが注目されています。
これらはどれも「体の健康」と深く関わっています。

分野

内容

① 運動不足

筋肉量と血流低下が脳への酸素供給を妨げる

② 食生活の乱れ

高脂肪・高糖質食が脳血管を傷つける

③ 睡眠の質の低下

脳内の老廃物が十分に排出されない

④ 社会的孤立

会話や刺激が減り、脳が“使われない”状態に

⑤ 栄養不足(特に高齢者)

タンパク質・ビタミン不足がサルコペニアや脳機能低下を引き起こす

 

① 運動不足 ― 脳の“エンジン”を止める最大のリスク

運動不足は、脳への酸素と栄養を運ぶ「血流」を弱らせます。
脳は体重のわずか2%の大きさですが、全血流量の約20%を消費するほど、
血流に依存して働く臓器です。

筋肉が衰えると、ポンプのように血液を押し出す力が弱まり、
脳の血流が滞りやすくなります。これが「頭がぼーっとする」「集中できない」といった初期症状につながります。

また、運動によって分泌される**BDNF(脳由来神経栄養因子)**は、
神経細胞の再生を助ける“脳の肥料”とも呼ばれています。
ウォーキングや筋トレなど、軽い運動でもBDNFは増えるため、
動くことがそのまま「脳のリハビリ」になるのです。

② 食生活の乱れ ― 血管の炎症が「脳の老化」を進める

脳の健康は「血管の健康」に直結しています。
高脂肪・高糖質の食生活を続けると、血液中の中性脂肪や糖が増加し、
血管の内側が傷ついて炎症が起こります。

この状態を放置すると、脳血管性認知症のリスクが上昇します。
また、糖の過剰摂取は「AGEs(終末糖化産物)」という老化物質を生み出し、
脳の神経細胞を酸化・硬化させる原因にもなります。

食事のポイントは、

  • 野菜や魚を中心とした「抗酸化・抗炎症型の食生活」

  • 食後高血糖を防ぐための「ベジファースト」

  • 間食を減らし、夜遅い食事を避けること

といった小さな習慣の積み重ねです。
食生活の改善は、最も身近で効果の高い認知症予防法です。

③ 睡眠の質の低下 ― 「脳の掃除時間」が短くなる

脳は眠っている間に、老廃物を排出するための「洗浄システム(グリンパ系)」を働かせています。
この機能がしっかり働くのは、深いノンレム睡眠のときです。

しかし、夜中に何度も目が覚めたり、浅い眠りが続くと、
脳内にアミロイドβタウたんぱく質が蓄積しやすくなります。
これらはアルツハイマー病の主要な原因物質です。

「睡眠の長さ」よりも「睡眠の質」が重要であり、
毎日同じ時間に寝起きすることで体内時計が整い、
自然と深い眠りが得られやすくなります。

睡眠の改善は、認知症の“早期ブレーキ”のような役割を果たします。

④ 社会的孤立 ― “話さない脳”は急速に老いる

人間の脳は、言葉・感情・判断・記憶を同時に使う“会話”によって最も活性化します。
逆に、人と話す機会が減ると、脳の神経ネットワークが使われず、急速に退化していきます。

ハーバード大学の追跡研究では、人との交流が多い高齢者ほど認知症リスクが半減することが示されています。
笑い・共感・雑談――これらの何気ないやり取りが、
脳にとっては「最高の認知トレーニング」なのです。

また、孤立はうつ症状や意欲低下を招き、結果的に運動量や食事量の減少にもつながります。
社会的孤立は、複数のリスクを同時に悪化させる“静かな危険因子”と言えます。

⑤ 栄養不足(特に高齢者) ― 「食べる力の低下」が脳を弱らせる

高齢者の中には、十分に食べているつもりでも、
実際にはタンパク質やビタミンが足りていない「隠れ栄養不足」が増えています。

タンパク質が不足すると、**サルコペニア(筋肉減少症)**が進行し、
体を支える筋肉だけでなく、脳に栄養を運ぶ循環機能まで低下します。
これにより、脳への酸素供給や老廃物排出が滞り、
結果として認知機能の低下が起こりやすくなります。

さらに、ビタミンB群やオメガ3脂肪酸の不足も、神経伝達物質の働きを弱める要因です。
「食べること」は「考える力を維持すること」と直結しています。

栄養状態を保つためには、

  • 毎日の体重チェック

  • 少量でも高栄養な間食(プロテイン・ヨーグルト)

  • 食事を楽しむ環境づくり(誰かと食べる・好物を選ぶ)

が重要です。

認知症予防
認知症予防になる生活習慣

運動が“脳の若さ”を保つ最大の鍵

認知症の原因は「脳だけの問題」ではありません。
血流・筋肉・生活リズム・栄養のすべてが、脳の働きを支えています。

1. 有酸素運動で血流を改善

ウォーキング・サイクリング・水中歩行などの有酸素運動は、脳への血流を増やし、神経細胞の再生を促します。
目安は週3〜5回、1回30分程度

信州大学が提唱する「インターバル速歩法」(3分速歩+3分ゆっくり歩きを30分繰り返す)も、
認知機能の維持に効果的と報告されています。

2. デュアルタスク運動(コグニサイズ)

「コグニサイズ」とは、運動と頭の体操を同時に行う方法です。
例:歩きながらしりとりをする、踏み台昇降をしながら計算をするなど。

脳の前頭葉を刺激し、「考えながら動く」習慣が認知症予防に直結します。

3. 筋トレでサルコペニアを防ぐ

サルコペニア(筋肉減少症)は、身体機能の低下だけでなく、脳の萎縮とも関連があることが分かっています。
筋肉は“第二の心臓”とも呼ばれ、血液循環を助ける臓器です。
スクワットやつま先立ちなど、軽い筋トレを週2回取り入れるだけでも、
脳の健康を長く守ることにつながります。

サルコペニア
サルコペニアの負のスパイラル

食事で脳を守る ― MIND食と「まごわやさしい」

「MIND食(マインドしょく)」とは、地中海食とDASH食を組み合わせた脳にやさしい食事法です。
アメリカでは、MIND食を続けた人はアルツハイマー発症リスクが半減したとの報告もあります。

しかし、日本人にとっては、MIND食の「ナッツ・オリーブオイル・ベリー類」は
少し馴染みの薄い食材かもしれません。
そこで注目したいのが、日本の伝統的な栄養バランス法「まごわやさしい」です。


🍱 日本人にぴったりの認知症予防食「まごわやさしい」

「まごわやさしい」は、和食の知恵を活かした健康法で、
次の7つの頭文字からできています。

文字 食材 栄養的ポイント 脳への効果
ま(豆) 大豆、豆腐、納豆、味噌 良質なたんぱく質・イソフラボン 神経伝達物質の材料に。サルコペニア予防にも。
ご(ごま) ごま、ナッツ類 ビタミンE・抗酸化作用 脳細胞の酸化ストレスを防ぐ。
わ(わかめ) 海藻類 ミネラル・食物繊維・ヨウ素 血管を守り、脳の血流を保つ。
や(野菜) 緑黄色野菜、根菜 βカロテン・ビタミンC 脳の酸化を防ぐ抗酸化栄養素。
さ(魚) 青魚(サバ・サンマ・イワシ) DHA・EPA 神経の情報伝達を改善し、認知機能を高める。
し(しいたけ) きのこ類 ビタミンD・食物繊維 免疫調整・血糖値安定・気分改善効果。
い(いも) じゃがいも、さつまいも 食物繊維・ビタミンC エネルギー源+腸内環境の改善。

🧠 「まごわやさしい」が認知症予防に効果的な理由

  • 抗酸化作用と抗炎症作用
     野菜・海藻・きのこ・魚の組み合わせが、脳内の酸化ダメージを防ぎます。

  • 血管保護作用
     魚のDHA・EPA、豆のイソフラボン、ごまのビタミンEが血管を柔らかく保ち、
     脳への血流をスムーズにします。

  • 腸脳相関(ちょうのうそうかん)
     発酵食品や食物繊維を多く含む「まごわやさしい」は腸内環境を整え、
     腸で作られるセロトニン(幸せホルモン)を増やします。
     これが脳のストレス軽減・うつ予防につながることが分かっています。


🍵 MIND食とまごわやさしい ― 「地中海×和食」の最強タッグ

MIND食とまごわやさしいは、目指す方向が同じです。
どちらも「植物性食品を中心に、魚を適度に、加工食品を控える」という基本が共通しています。

したがって、日本人にとっては、
まごわやさしいを意識すればMIND食を実践しているのと同じ
と考えてよいでしょう。

毎日の食卓に、味噌汁・焼き魚・海藻・煮豆・季節の野菜をそろえるだけで、
科学的にも効果が実証された“脳を育てる食事”が完成します。

まごわやさしい
覚えておきたい「まごわやさしい」

質の良い睡眠が「脳の掃除」を助ける

睡眠中、脳内では老廃物(アミロイドβなど)を除去する“脳の掃除”が行われます。
この仕組みを働かせるには、7〜8時間の規則的な睡眠が理想的です。

💤 睡眠の質を高める3つの習慣

  1. 毎朝同じ時間に起きる(体内時計を整える)

  2. 寝る前30分はスマホ・TVを見ない

  3. 昼寝は30分以内にとどめる

筑波大学の研究でも、就寝・起床リズムが安定している人ほど認知機能スコアが高いと報告されています。
睡眠は「時間の長さ」ではなく、「質」と「リズム」が重要です。

栄養不足とサルコペニア ― 見えない認知症リスク

近年、見逃されがちなのが高齢者の低栄養です。
「食が細くなった」「体重が減った」と感じたら要注意。

スイスの臨床研究では、管理栄養士のサポートを受けた高齢者は、
入院リスク・死亡率が大幅に低下しました。
特にタンパク質摂取量が多いほど、認知機能が維持されやすいとされています。

🍗 栄養のポイント

  • 体重1kgあたり1g以上のタンパク質(例:体重60kg→60g)

  • 肉・魚・卵・大豆をバランスよく

  • 食欲が落ちる場合は、少量で高栄養な間食(ヨーグルト・プロテインドリンクなど)を利用

栄養不足はサルコペニアを加速させ、最終的に認知症リスクを高めます。
「食べる力」もまた、脳の健康を守る力なのです。

社会的つながりが脳を活性化する

人と話す、笑う、考える――
この一見当たり前の行動が、脳にとっては最高の刺激です。

社会的孤立は、喫煙や高血圧と同じくらいの認知症リスク要因とされています。
ボランティア活動、地域の集まり、趣味のサークルなど、
誰かと関わる時間を意識的に持つことが大切です。

将棋・カラオケ・手芸・ガーデニングなど、
「楽しい」と感じることこそが、最も自然な脳トレになります。

今日からできる「認知症予防の5分習慣」

  • 朝:姿勢を正して深呼吸を3回

  • 通勤・買い物時:一駅分歩く

  • 食事:野菜から食べる

  • 夜:寝る前にスマホを閉じ、湯船に10分浸かる

  • 週末:誰かと会話をする・笑う

この積み重ねが、「脳の健康貯金」になります。
完璧を目指すよりも、“できることを続ける”ことが最も効果的です。

毎日を楽しく過ごすことがカギ

藤接骨院が考える ― 「体を整えることは、脳を守ること」

藤接骨院では、
姿勢 × 血流 × 自律神経」の3つを整えることが、
脳の健康維持にも直結すると考えています。

  • 姿勢が整えば、首・脳への血流が改善し、酸素供給がスムーズに。

  • 血流が整えば、脳内の代謝や老廃物の排出が活発に。

  • 自律神経が安定すれば、睡眠の質・集中力・気分が向上。

これらは、医学的にも認知症予防の基盤とされる要素です。
私たちは「痛みを取る治療」だけでなく、
**“脳を若く保つ身体づくり”**をサポートする治療院でありたいと考えています。

未来の自分を守る、小さな一歩を

認知症予防は、特別なことではありません。

  • 体を動かす

  • よく食べる

  • しっかり眠る

  • 人と話す
    この4つを丁寧に続けることが、最も確実な“脳の治療”です。

年齢を重ねても、笑顔で過ごせる未来のために。
今日という日から、できる一歩を始めましょう。
それが、あなた自身の脳を守る最良の選択になります。

🩵 藤接骨院は、地域の皆さまの健康寿命を支える治療院です。
姿勢・血流・自律神経のバランスを整え、
“からだと脳の両方の健康”を守るサポートを行っています。

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